サテライト『創星のアクエリオン』

これはテレビシリーズの『創聖のアクエリオン』の続編、というか同様の設定での違う話か前日譚かなのだが、見る前に『アニメギガ』に河森正治がでてたのでそれを見て予習した。

テレビシリーズを見たのはもう大分前で河森正治という名前もさらいにえばアニメ自体も今より全然見てなかったので、第19話以外の各話の詳細などかなり忘れてしまったが、今回『創星のアクエリオン』をみてある程度思い出してきたと思う。まあでもほかの河森作品を見てからテレビシリーズを見たら違った印象があったとは思う。
まず『アニメギガ』で見た河森の印象だが、ここまで見てきたように、ロボットとエコが二本柱なんだな、ということだ。一応ここでは全体の調和を前提としたその調和への指向性をエコと呼んでみる。ロボットに関していえば、番組の最初でアクエリオンの玩具が実際に合体変形するのを説明しながら、自信がそれを実演してみせるのだが、そのときの表情を見るとトークは適当にやっていて神経の大半はロボットに集中しているようで、この人は本当にロボットが好きなんだなと感じた。またエコに関してだが、実際に自宅の庭で自然農法とかいう、手入れを全くしない農法を実践していて、『地球少女アルジュナ』にでてくるじじいと全く同じことを言って説明していた。要は害虫、敵などいないと。この二本柱がどうやって彼の中で確立していったかはわからないが、作品を発表順に見てみるとだんだんエコの要素が強まっているとおおむねいえると思う。しかし即断はできない。というのは、ロボットやメカデザインに関しては自分で監督した作品でなくてもできるが(『交響詩編エウレカセブン』とか)、エコに関しては自分が監督するか原作を担当するかしないといけないだろうから、自分の作品ではエコの傾向が強まるということなのかもしれない。とはいえロボットにしても自分が監督した作品でないと完全に自分の思うようにはできないだろうが。
これをふまえた上で今回の『創星のアクエリオン』を見ると、テレビシリーズと比べて明確にエコの部分が協調されているということがわかる。主人公のアポロは確か『創聖』のほうではなんか何にも考えずに前に進んでいくような主人公だったと思うが、このOVAではアポロはなんか悟っている。最初彼はどうやら文明から切り離されて生きていて、まあいってみれば自然農法的に生きているという感じだ。そしてさらにいえば彼は例えばシルビアよりもより真実に近づいている。しかしそれは狭い世界でしか通用しない真実だ。不動はアポロにより広い世界を見せ、いってみればその世界の真実を示そうとする。要は世界がいかに危機にあり、それを人間自身がもたらしたということだ。この辺りは他の河森作品を見ていると(というか見ていなくても)非常にわかりやすい。しかし重要な問いが欠けている。つまり「いかに戦わないか」だ。おそらく河森はここではこの問いに取りかからなかった。しかし最後に重要なシーンが現れる。つまりシルビアとピエールが二人でアポロニウスの生まれ変わりを探しに廃墟を訪れるというシーンだ。これは『創聖のアクエリオン』の冒頭のシーンだ。このように考えることができる。たしかにOVAでは河森にとって最も重要な問い、「いかに戦わないか」という問いに答えることはなかった。その代わりに作品自体をテレビシリーズと結びつけることで問い自体も引き継がせたのだ。もちろんいろいろな言い方ができる。問いに答えられなかった、とか問いを回避したとか。しかしその辺りはあまり重要ではなくて、OVAにはそういった問いはない、という事実と最後にテレビシリーズと結びつけられているという事実だ。で、そうなるとテレビシリーズとOVAの関係性が明確でなくなる。最初に「同様の設定で違う話か前日譚か」といったのはそのためだ。

そんなわけで河森正治という作家についての見方が固まりすぎてしまった感があるが、次のマクロスの続編は何をするのはか興味深いのでほかのもまだ見ていきたいと思う。