BONES『絢爛舞踏祭 ザ・マーズ・デイブレイク』

逢坂浩司追悼ということで、彼がかかわった作品をいくつか。彼の画風とかアニメの世界における彼の位置づけとかはよくわからないが、なくなったときにはかなり報道されていたし、重要な人物なのだろう。というわけで『カウボーイビバップ』はすでに見たのでBONES作品を中心に。

で、まず見たのが『絢爛舞踏祭 ザ・マーズ・デイブレイク』。火星を舞台にした海洋ロボットアニメ、とか言えばいいのだろうか。海洋ものってのは多いのだろうか。『沈黙の艦隊』ってアニメ化されてたっけ? 僕が見たのは『青の6号』ぐらいだ。でもどちらもロボットはでてきていなかった。水陸両用ってのはガンダムの頃からあっただろうが、水中のみってのはどうなんだろう。ほかにあるのだろうか。
それはともかく、残念だ。残念すぎる。僕がBONES作品の中で見たのは『KURAU Phantom Memory』『交響詩篇エウレカセブン』『Wolf's rain』『Darker than black 黒の契約者』だが、そのなかでこの『絢爛舞踏祭 ザ・マーズ・デイブレイク』は僕にとって最も残念な作品だ。
何が残念かってその政治性の欠如だ。なんか知らんがみんな通じ合う。しまいには敵対しあっていた者も主人公に協力したりする。『キン肉マン』みたいだ。『ハゲタカ』みたいだ、と言ってもいい。そもそも主人公およびRBと呼ばれるロボットは「夜明けの船」という船(潜水艦)に乗った海賊に所属しており、地球軍(火星は地球の属国であり、自前の軍隊を持たない)に追われている。海賊が正義とかいうのってどうなんだ。いや、正確にいえば正義とかいってもいい。しかしそれを通すためには戦術なり戦略なりが必要だろう。それがない。最後に主人公が仲間を助けるためにそれまで戦っていた強敵に有り金はたいて協力を乞う場面があるのだが、その有り金ってのがその強敵にしてみたら全然足りない。でもなんか協力してしまう。アホかと。せっかく海賊なんだから海賊らしいことしてほしい。そもそも海賊というものは国家が定める法に守られていないのだから、高度な政治力が求められるはずだ。ロボット云々いう以前にそういうところをなんとかしてほしい。『天元突破グレンラガン』のところでも書いたが、善意によってシステムが支えられているとしたら、それは僕のようなロボット左翼にとってはシステムの欠陥でしかない。それはもちろん善意があってはならないということを意味しない。善意は誰もが持ち合わせているものではなく、それ故に希少であり脆い。だからそれに依存しないシステムを作り上げなければならない。ロボット左翼は人間を信じないし人間の善意を信じない。人間よりシステムを優先させる思考が(ロボット)左翼の思考だ。そういう考え方が『絢爛舞踏祭 ザ・マーズ・デイブレイク』には欠けている。まあ端的にいうとみんないい人過ぎということだ。いい人とかいらない。悪い人だけでなにかアニメを作ってほしい。

でロボットについてだが、海中専用のロボットなのにごつごつしている。もっとこう流線型になってなきゃいけないのではないだろうか。しかもなぜか水中での移動が猛烈に速い。その点敵のキュベルネスのRBはロボットに見えないくらい滑らかなラインで良い。泳ぎも速そうだ。あと的をやっつけたりすると敵機が爆発したりするのだが、水中での爆発ってのはどうなるんだろうか。見たことないので分からないが、なんか陸上とかで爆発するのと同じように描いている気がする。