サンライズ『無限のリヴァイアス』

たぶんもうすぐ『コードギアス』の残りが放送されるはずだから、その前にとりあえず谷口作品をいくつか見ておこうかなと思ってまず見たのがこの『無限のリヴァイアス』だ。確か監督第一作目かな。何となく彼のことは前回のエントリーで言うところのロボットアニメ左翼の系譜に入る人だというイメージがあるので多分自分の好みに合っているだろうと踏んでいた。僕自身はどう考えてもロボットアニメ左翼なので、とりあえずそのあたりのアニメは見ておいた方がいいと思っている。

前回のエントリーでは子供たちと政治の問題を扱ったが、この『無限のリヴァイアス』はまさにそれを中心的に扱ったアニメだといえると思う。本来政治的なものにはかかわることのない子供たちをどうやってかかわらせるか、ということを考えた場合、ファーストガンダムの場合は偶然性と切迫性によってそれを可能にしたといえる。要するに、たまたま乗ってしまった、そしてとにかく人員が足りない、で、何となく最初にうまくいってしまったからとりあえずこいつに乗ってもらおう。さすがに見ず知らずのやつなら問題だろうが幸い開発者の息子ときた。まあ納得しないこともない。実は僕が見たのは劇場版のみでしかも大昔なのでテレビシリーズとかだともっとそこら辺が細かく記述されているのかもしれない。まあとにかくたまたまということと、切羽詰まっているということが重要なポイントだ。

本作の場合はもっと説得力があると思う。つまり子供しかいなくなってしまうのだ。リヴァイアスというでっかい宇宙船みたいなものに研修と称して乗せられて、そのあと教官というか大人たちはよくわからんが殺されてしまうと。で、そのあと宇宙を漂流するわけだが、なぜかいろいろ攻められたりするので応戦しないといけないし、また何百人と残された子供たち(いってもせいぜい20代半ばぐらい)を取りまとめないといけない。必然的に自治が必要になるし、秩序を構築しなければいけない。この辺りはうまいこと考えたなと思った。『コードギアス』では主人公があらかじめ政治に近い王族の人間で、なおかつ政治に関わる動機を持っているという設定だったので、子供と政治の問題はそれほど問われていないが、本作ではそのあたりの考察が十分になされたのではないか。だいたいロボット左翼(リアルロボット系)にとってはそもそも子供がいること自体がおかしい。『装甲騎兵ボトムズ』はまだ見ていないが、多分子供は出てこないだろう。いくら何でも郷田ほづみなら若くても二十歳前後なのではないだろうか。ということは普通に就職したのと同じだから、ここでいう意味での子供とは関係ない。相良宗介(『フルメタルパニック』シリーズ)が軍にかかわっているのはゲリラ上がりの傭兵だからおかしくはないが、日本の学校に通っているのは明らかに変だ。おそらくロボット左翼とはそういう無粋なツッコミをしてしまう人種なのだと思う。ちがうか。まあとにかくそういうツッコを重ねることである種の「リアルさ」というものの追求というのがあったのは間違いないのではないだろうか。ロボットがどう動くかという工学的な問題だけではないと思う。僕自身の好みとしては、はっきりいってガキなんて一人も出てこなくていいのだが、ロボットの世界にどうやってガキを組み込んでゆくかということに関する考察を経ることで独特な設定なり状況なりを作り上げてきたことは否定できないわけだし、実際問題あんまりガキが出てこないロボットアニメがどうやってもマイナーであるという現状がある以上、この点に関する考察は必要だし有益であると思う。マイナーであることはわるいことではないが、採算の取れないマイナー作品はどうしようもないだろう。

政治の話でいうと、結局適切な政治スタイルを見出すことのないままに物語が終わってしまった気がする。それはそれでリアルだ。結局独裁が一番まともなんじゃないだろうか、なんてことがほのめかされている。実際にいまの中南米とかを見るとあながち否定できないと思う。要はよい独裁とわるい独裁があって、よい独裁は結構ハッピーかも、だけど独裁する人がいなくなったらどうなんだ、的な問題があって、もしかしたらこれが一番の問題かもしれんが。いずれにせよ民主主義がそんなにいいものかどうかは疑わしいということはプラトン以来いわれていることだが、それは心に留めておいていいかもしれない。まあそれはアニメとは関係ない。ともかく最初はジャーゴン的なものが頻出して、何がなんだかわからなかったが、だんだんわかってきて一気に見ることができたというのは、多分面白かったのだろう。次は『スクライド』か『ガン×ソード』か。しかし『コードギアス』の続きはいつやるんだ、とか思ってたらもう放送日は決まっているらしい。